yuiwai’s blog

僕の好きなものをオススメしたり、趣味や日常のことを書くブログです

ゴールデンカムイ(20) - 尾形は一体どこを目指すのか?

あれよあれよという間に、ゴールデンカムイも区切りの20巻ですね!

ゴールデンカムイ 20 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

ゴールデンカムイ 20 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

 

表紙は一周回った感のある堂々の杉本!歴史の重みを感じます。

 

前回までのお話 

さて、思い返せば19巻は激動の展開でした。

ゴールデンカムイ 19 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

ゴールデンカムイ 19 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

 

再会、そして別れ...

 

-- 以下、ネタバレを含みますのでご注意ください --

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キロランケ一行は刑務所からソフィアを脱獄させることに成功します。が、その直後に杉本一行と遭遇、壮絶な戦いの末、キロランケは命を落とし、尾形と月島も重体となります。

 

杉本はついにアシリパ、そして白石と再会(再会の儀式もいかにもゴールデンカムイ流で微笑ましかったですw)

 

各々の想いと策略が交錯した交差点...そして20巻へ

 

20巻の感想と考察

まず、尾形がどうなったかがまず気になったのではないでしょうか。

アシリパの放った毒矢に目を射抜かれましたが、杉本の咄嗟の対応で一命は取り止めています。 

スナイパーである尾形にとって、隻眼は大きなハンデとなるはず。今後の展開に影響思そうですね。

 

ソフィアは、杉本一行とは接触せずに仲間の元に合流しましたね。唐突な分断感もありましたが、重要な人物だと思うので、今後大事な場面で再び出会うことになるのでしょう。

氷の中に埋葬されたキロランケに別れを告げるシーンは印象的でした。

 

そして、登別(北海道)では、新たな動きが...。

登場人物が多いので、誰が今どこにいるのか分からなくなってきますw

 

最大の山場を演出したのは尾形でした。

杉本は尾形を死なせるわけにはいかず、現地の医者に診せます。治療を受けた尾形はなお重体でしたが、看護師を人質に取り逃走。ここで、彼がロシア語を話せることが明らかとなります。

 

ここで、鯉登の回想シーン。

ここから彼の過去が見えてきました。それにしても、鶴見はどこにでも出てきますね。

 

さて、一体、尾形はどこに向かうのでしょうか?

ここに来て、彼の目的が全然分からなくなって来ました。

これまでの流れから、「戦場においても人を殺さない義兄」に対して憎悪を持っていたことは分かっています。アシリパに、自分を殺すよう促すシーンからも、そういった「清い」存在に対してその思想を打ち砕こうとする挑戦のように感じられます。

だとしても、それが彼自身が命をかけて達成したい目標でしょうか?

 

流氷の上でアシリパと二人になった際には、執拗に金塊の秘密について聞き出そうとしていました。なので、そこに対して何らかの理由で執着があることは間違いありません。がしかし、その「理由」が未だに見えてこない。

 

これまでの彼の姿はまだ氷山の一角であり、今後、明らかになっていない尾形の過去が少しずつ見えてくるのかと思います。

 

続きが気になりますね!

コウノドリ/いのちの重みを考える機会に

この作品に出会ったのは、ちょうど妻が妊娠/出産を迎える頃で、新しい命を授かることがどれほど奇跡であるか、身をもって体感しました。 

コウノドリ(1) (モーニングコミックス)

コウノドリ(1) (モーニングコミックス)

 

上の子が逆子だったため、帝王切開になり、その流れで下の子も帝王切開でした。

妻は、子供達が生まれてくるために、二度もお腹にメスを入れたわけです。

僕は(幸いなことに)今まで手術は愚か、病気も大きな怪我もせずに生きてきたため、その大変さが分からないのですが、手術とか想像するだけで恐怖です。

 

今は絶賛育児中で、毎日が本当に大変ですが、母子ともに無事で、健康に生まれてきてくれたことを思うと、自分も頑張らないとという気持ちになります。

新しい命の誕生を「当たり前」ではない「特別なこと」、と認識させてくれたのがこの作品です(この漫画、そしてドラマと出会っていなければ、妊娠/出産は無事に終わって「当たり前」と思い込んでいたかもしれません)

 

これから親になるであろう若年層、特に男性に読んでもらいたい。

生まれてくる命に対する責任。

妊娠、出産、そして育児は、想像していた以上に大変なものです。

そして、妊娠から出産を経て、女性の心と体は劇的に変化します。どんなに文明が発展しようと、科学が進歩しようと、それは避けられない現実。周囲やパートナーが理解して、支えてあげる必要があるのです。

 

そのことが、今の社会だとなかなか分からない。

遥か太古から続く人の営みの中で、自然と親から子、世代から世代へと受け継がれてきたことが、核家族化や少子化、女性の社会進出、その他の様々な要因で、大きく変わってしまい、ぽっかりと穴が空いてしまっているような気がします。

 

赤ちゃんを抱っこしたパパやママが電車で立っていても、誰も席を譲ろうとしないことがあります。気がつかなかったのならしょうがないでしょうが、気づいていても見て見ぬふりをする、あるいはそもそも譲ろうという考えに至らない、というのは問題です。

また、マタニティーマークをつけた女性にどれくらいの人が気づくでしょうか?

パッと見てお腹が大きくなくても、妊娠初期はつわりがひどかったり、あるいは流産などのリスクが高い時期でもあるので、誰よりも優先的に席に座るべきです。

 

 

自分たちが当事者でなかったとしても、新しい命、赤ちゃんや子供たちを守るのは社会の一員としての務めではないでしょうか。そういう社会になっていかないと、誰も子供を生み、育てようなんて思えなくなってしまいます。

 

自分を生み、育ててくれた両親への感謝。そして、命の大切さ、重さを知ることで、周囲に対する互いの尊重がもっとできるのではないでしょうか。

 

この作品を、いつの日か親になるであろう子供たちにも、読ませたいと思います。

ブラム学園 !アンドソーオン - BLAME!の世界がまさかの学園コメディに

BLAME!のスピンオフ作品として描かれた学園モノ+α

 本編を読んでから読むことをオススメいたします。

BLAME!  (ブラム!) コミック 全10巻 完結セット (アフタヌーンKC)

BLAME! (ブラム!) コミック 全10巻 完結セット (アフタヌーンKC)

 

弐瓶先生に何が起こったのかわかりませんが、すごい落差です。驚きです。遊び心だけがあります。

本編が硬派過ぎるだけに、衝撃も増します。

霧亥はひどい扱いを受けていますし、サナカン先生は相変わらずですし、シボは完全にヒロインですし、ドモとイコの絡みもなんかほっこりします。珪素生物たちも憎めない感じでなんか可愛いです。

 

+αのところに入っている作品も魅力的ですし、盛りだくさんな一冊ではないでしょうか。

くれぐれも、本編より先に読まないでください。

嫁が「ハコヅメ」を絶賛するので紹介します

最新刊の10巻が最近出たばかりの「ハコヅメ〜交番女子の逆襲〜」という漫画をご紹介します! 

ハコヅメ~交番女子の逆襲~(10) (モーニング KC)

ハコヅメ~交番女子の逆襲~(10) (モーニング KC)

  • 作者:泰 三子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/11/21
  • メディア: コミック
 

嫁が大好きで、毎巻発売直後に買っています。(僕自身はハマっている、と言うほどではないですが、普通に楽しく読んでます)

 

作者は元警察官で、10年ほど勤めていたそうで、実体験を元にした(と思われる)警察の内部事情の話はリアリティに溢れています。しかも「女子」の目線から描かれる警察の世界は、ドラマで見るような華々しい警官の活躍とは一風違った、生々しい男社会の現実を浮き彫りにしています。おそらくは男目線では描けないような切り口がたくさんあり、シンプルに興味深いです。

 

端的に感想を言うと、「ハード過ぎやしませんか?」と。

夜通しの張り込み、疲弊した状態での訓練、凄惨な事故現場、人間心理を読む技術が要求される取り調べや尋問、危険がいっぱいの犯人追跡、一度引くと大変なことになる拳銃、サボるわけにはいかない報告書...

 

そんなハードな日常を描きつつも、ほっこりと読めるのは、作者が描き出すキャラクターたちがコミカルで憎めずほのぼのとしているから。シリアスな展開もありつつも、悲観的にならないようにうまくバランスが取られていますね。

 

さて、10巻ですが、気になる動きがありました。

1巻で交番に異動してきた藤部長ですが、その理由はフワッとしていました(川合はパワハラと信じていましたが、実は違うっぽい、ということにやっと気がつく)

 

ハコヅメ~交番女子の逆襲~(1) (モーニング KC)

ハコヅメ~交番女子の逆襲~(1) (モーニング KC)

 

 

藤部長に関する伏線としては最初期からそれっぽく匂わせる記述(この人との出会いを後悔云々)はありましたが、いよいよ核心に迫るのでしょうか???

その第一弾として、10巻には「特別編・同期の桜1」という、藤の過去のエピソードが収録されています。(1とナンバリングされているので、この続きがあるということだと思いますし、そもそもとても中途半端なところで終わっている)

なにやら重い展開が待っているのでしょうか...。あのダンボールの中身は何なのか...。気になります。

 

それにしても、泰三子さんは巻を重ねるうちに、どんどん絵が上手くなっていきますね!次巻も楽しみです。

AKIRA - 不朽の名作サイバーパンクがフィギュアに!このタイミングなので、AKIRAを語りたい!

大友克洋氏の名作、「AKIRA」のフィギュアが海洋堂から発売されるのを記念したイベントが開催されるそうです。

headlines.yahoo.co.jp

 

海洋堂代表取締役宮脇修一さんの著書についても紹介しています。よければこちらもどうぞ!

yuiwai.hatenablog.com

 

AKIRAと言えば、映画版が有名かと思いますが、ご紹介するのは原作となった漫画版です。 

AKIRA 全6巻完結セット(KCデラックス)

AKIRA 全6巻完結セット(KCデラックス)

 

漫画の連載を休止して、映画の制作に入ったのち、再び連載して完結した、という作品です。

2020年の東京五輪が予知されていたことで、五輪開催決定以降、話題になっていますね。この記事を書いている2019年は、ちょうど「AKIRA」の世界の時間と同じ頃ということになります。

連載開始が1982年で、実は僕と同じ歳です。そう考えると、何か感慨深いものがあります。

僕がこの作品に初めて出会ったのは小学生のころ。友人がハマっていて強くおススメされたのですが、この書籍が普通の単行本ではなく、大型本で少し値段も高くて(1000円前後)、当時の自分にはそう簡単に全6巻を揃えられるものではありませんでした。

その後、中学生になり、おこづかいを貯めてこつこつ買い揃え、最後の6巻まで手に入れたときは非常に感動したのを覚えています。連載モノの漫画に最終巻にありがちな事ですが、他の巻より少し厚いんですよ。それがまた、ちょっと特別感があって。

その後、これでもかというくらい、何度も読んで、周囲の人にもすすめていたわけですが、高校のとき、学校に持っていって教室に置いておいたら、そのまま行方不明になりましてw
なぜか、6巻だけは手元に残ったのですが...。いやー、あれはショックでしたね。

 

まあ、そんなわけで、僕にとって色んな思い出がある作品ですが、特に僕が好きなポイントを紹介させてください。

(以下の文章には、あらすじ的なものはほぼ出て来ません。ネタバレ的な要素もなるべく排除しています。が、本編を知らずに読んでも、あまり響くものもないかと思いますのであしからず)

 

存在感溢れるキャラクターたち

金田や鉄男の存在感は、もはや語るまでもないと思うので、ここではあえて除外して、他のキャラクターにスポットを当ててみます。

 AKIRAの存在感

アキラは、自ら前面に出て来るようなキャラではありません。言うならば、象徴です。刺激を与えるとヤバイことはみんな承知していますが、かといって、何かを主張したり、行動したりということはないので、見方によっては地味な存在です。

しかし、地味だからこそ放つ存在感があると思います。彼がカジュアルに喋ったり自己主張をしたら、それこそ象徴としての存在が崩壊してしまう。

作品全編を通して、自我が崩壊した姿であることが、「力」の危うさを裏付ける説得力に繋がりますし、何よりラストへと向かう大事な伏線なのではないでしょうか。

 

かっこいい中年たち

大佐とおばさん。この二人が大好きですね。自分がおっさんになったから余計にバイアスがかかっているのかもしれませんが...。

フィジカルの強さはさることながら、メンタルの強靭さに感嘆します。 少年たちは若さと勢いがありますが、中年勢はどっしりとした重さがあり、地に足の着いた感じがあります。彼らがいることによって、健康優良不良少年たちが引き立つわけですね。窮地に立たされた時の判断力、物事を完遂することへの責任感、信念を貫き通すことへの執念。

だからこそ、最後、金田に誘われた大佐がやんわりと断るシーンは、為すべきことをやり遂げた=解放された男の姿を感じ、心に響くのです(僕だけでしょうか?)

また、おばさんのケイを見守る優しさにも心打たれます。そこには女性特有の母性があり、それは男の友情とはまた違った人と人のつながりを演出しています。

 

ミヤコの存在感

かっこ良すぎます。個人的に一番の鳥肌シーンはミヤコがSOLを操作するケイに「ここに落とせ」と指示する場面ですね。これは、実際に読んで感じていただきたい!

 

ミヤコのような、お師匠様的立ち位置のキャラが、実際に前線に出てくる系の展開って、熱くないですか?それだけ状況が切羽詰まっているというか、物語のハイライトに差しかかっているという感覚になります。ダイの大冒険で例えるなら、アバンやマトリフが戦うようなものです(例えが古いw

 

それにしても、ミヤコの映画版での扱いは... (略

 

ケイは人と人の架け橋

ケイの存在価値はなんでしょうか?

作品全体を通してみた時に、僕が思うケイの役割というのは、人と人の架け橋、接着剤のようなものではないかと。

彼女の存在を取り除いた場合、何が起こるかというと、人と人が繋がらないんじゃないかという気がします。

序盤で、金田たちとゲリラとを繋いだのも彼女の存在だと思いますし、終盤のミヤコをはじめとするナンバーズたちが鉄男と対峙するのも彼女を介しています。ヤサくれたリュウを気にかけたのもケイですし、ラストで金田を救い出したのもケイです。

彼女の役割は非常に重要で、金田が自由に動き回るキャラとして成立するためにはその他の様々な(物語の進行上の)雑務をこなしてくれるケイのような存在が欠かせないのです。魅力的な金田像は、ケイによって支えられていたのです!まさに、良きパートナーですね。

 

活き活きとしたモブ

見落されがちかもしれませんが、モブもしっかりと丁寧に描かれているのが、メインキャラクターたちを引き立てるのに一役買っています。縁の下の力持ちですね。

シーン内に必要最低限なものだけが描かれていると、画としてクリーン過ぎるのです。良い感じに汚れがあってはじめてリアルな空気感が生まれる。モブはそんな、ノイジーな歪み系と世界に広がりを持たせる空間系のエフェクトを担っている気がします。

モブも、ただ並べればいいというものではなく、きちんと個性を持って、生きた存在として切り取らないと、ただの集合写真になってしまう。彼らの一挙手一投足から、物語の世界観、政治的、文化的な背景などが見えてくるのです。

 

 

魅力溢れるガジェット

衝撃の衛星兵器

SOLですね。初めて見た時には度肝を抜かれました。空からレーザーが一直線に地面に突き刺さるあのシーンです。宇宙の「高さ」を感じられる素晴らしい構図!

あのシーンに限らずですが、緻密な背景の描写があるからこそ、空想の兵器であるSOLやフロイトにリアリティが生まれると思います。

フロイトは完全に噛ませ犬でしたね...。 

 

レーザー砲+金田

この組み合わせのカッコよさは異常です。(映画版でも、漫画版とはだいぶ状況が違いますが有名なシーンですね)


AKIRA  金田と鉄雄の対決

 

「力」で戦う鉄男とケイの間に、生身の金田が割り込んでいくわけですよ。無鉄砲にもほどがありますが、それをやってのける金田に痺れる憧れるわけですよ。

この「生身」のリアリティが良くて、バトル漫画にありがちな人間離れした能力でなんとかなってしまう感じとは違う、一発食らったら死んじゃう、という緊張感が続くわけです。

レーザー砲という秘密兵器が、どれくらいのアドバンテージになるのか?これで勝てるのか?そもそも、まともに戦えるのか?

読者はそんな期待と不安の入り混じった感情を金田に寄せる。超能力とSF兵器の異種格闘技戦です。ボクシングとプロレスで、試合になるの?っていう、あの感覚です(例えが分かりにくかったらすいません...)

 

このシーンは、なりふり構わぬ金田の魅力が全開で、しまいには、レーザー砲で殴るわけですよ。最先端の兵器を使っての物理攻撃です。こういった勢いのあるアクションシーンは、高い画力が要求されますが、そこはさすがの大友さんですよ。しっかりと体重の乗った一撃がクリーンヒットする描写は完璧です。

 

冷凍カプセル&エレベーター

パイプ好きにはたまらないです。緻密な背景の描き込みが魅力の一つである本作ですが、冷凍カプセルとその周辺施設の描写は特に好きです。

終盤の、暴走した鉄男がカプセルと共に地上に現れるシーンは圧巻です。そしてもちろん、地下のエレベーターも。あの、重量感溢れる動作が良いですね。あれに乗っている時は少しだけ時間がゆっくり流れている気がします。独特のタメを生み出す良いアクセントなのではないでしょうか。

序盤にこの施設を舞台にしたシーンがあった上で、終盤にもう一度同じ場所を舞台として物語が進行するのは、色々と感慨深いものがあります。この作品は、序盤の頃からすでに物語の最終盤で回収されることを想定した伏線が張ってあったりするのですが、この施設の再利用も初めから想定されていたのかもしれませんね。

 

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以上、僕の趣味で好き放題書かせていただきました!

とにかく、サイバーでパンクで、ワクワクするようなSF的要素、魅力的なキャラクター、高い技術で描き出された背景と人物、きっちりと伏線も回収して綺麗に完結しているストーリーと、あらゆる面で完成度の高い作品ですので、未読の方はぜひ読んでみていただきたいです。

NOiSE - BLAME!の前日譚?在りし日のネットスフィアとカオスの始まり

NOiSEは弐瓶勉氏の短編作品で、おそらくはBLAME!へと繋がる前日譚となっている物語です。

NOiSE (アフタヌーンコミックス)

NOiSE (アフタヌーンコミックス)

 

 

BLAME!においてはネット端末遺伝子が失われたことにより、ネットスフィアへのアクセスは閉ざされ、都市は正常な機能を失っていますが、NOiSEはまだネットスフィアによる統治以前(というか、ちょうど統治が始まる頃)の世界が舞台です。

主人公である裾野結(すそのむすび)は警察官として相棒クローサーと児童誘拐事件を追っていました。が、謎の教団との接触クローサーは命を落とします。

この謎の教団は、「ネットのカオスが生み出した力」を利用しているとの発言がありますが、それはつまるところセーフガードの技術のことです。

セーフガードは、ネットスフィアが統治する世界の安全を守るために新たに組織された団体ですが、その保護対象は「ネット端末移植を受けた人間」だけ。それに対して、結は反発します。ネット端末移植を受けられるのは一部の富裕層のみで、つまるところ、ネットスフィア貧困層を切り捨てることを明言しているからです。
結が追っていた誘拐事件の被害者たちは、貧困層の子供達が中心でした。

彼女は自らの信念で、単独で教団と戦い続けることを誓います。

 

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ところで、BLAME!においては、「ネット端末遺伝子」を持つ人間のみがネットスフィアにアクセス出来るという設定でした。NOiSEにおいては「ネット端末移植(インプラント)」で、微妙に違いがあります。

ちなみに「ブラム学園!アンドソーオン」の中に収録されている短編「ネットスフィアエンジニア」には、「通信端末移植」を受けた人物が描かれていますが、これはNOiSEの「ネット端末移植」とほぼ同義のものと考えられます。

いずれにしても、あくまで、後天的に物理デバイスを埋め込んだものであり、遺伝子のような先天的なものではありません。 NOiSEの世界から、BLAME!の世界までの間に、技術的な進歩があり、わざわざ物理的に端末を埋め込まなくても済むようになったのでしょう。

 

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NOiSE本編の話に戻ります。

教団に追われ、一度は命を落とした結でしたが、セーフガードによって蘇生され、強制的に改造を施されます。セーフガード曰く「最高の技術」を投入したそうで、その能力は強力無比です。

セーフガードは彼女に「教団の破壊」と「ネット端末移植を持たない人間の排除」を命じますが、先に触れた通り、後者は彼女の信念に反しており、両者は決裂します。

 

その後のネットスフィアの繁栄については本作には記載がありません。あるのは、カオスが加速し、荒廃した世界で戦い続ける結の姿、そして無尽蔵に拡張を続ける都市。まさにBLAME!の世界です。その間、三十世紀もの時間が経過しているとのことですが、果たしてネットスフィアによる統治はどの程度機能していたのでしょうか?

 

 

BLAME!の時代においてもネットスフィア自体は健全で、あくまでもそこに正規にアクセスできる人間がいない、という状況のはずですが、まあ、利用者がいないサービスを健全と呼ぶのはどうか、というところですね...

 

 

本作を通して、BLAME!だけでは見えてこなかった組織の成り立ちや関係性が見えてくるので、短い作品ですが非常に重要な役割を担っていると思います。

人形の国(5) -エスローは活動不能、帝国の奇策?

弐瓶勉さんの、人形の国(5)が発売されました!

人形の国(5) (シリウスKC)

人形の国(5) (シリウスKC)

 

 以下、ネタバレを含む本編の考察です!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前回は帝国の上級転生者ジェイトの介入で、天候調整装置ウメが北合成スラブ地方に落下。エスローはモロに巻き込まれ、大怪我(ケガってレベルじゃないけど!)を負って活動不能状態に陥りました。

そして、末期の人形病に加えて、タイターニアの腕との癒着の影響で、もはや原型を留めなくなっていたカジワンは、自我が失われる寸前に転換に成功し、強力な力を手にした上に、タイターニアのクローン(?)を従えて、独自の行動を始めます。

 

人形の国(4) (シリウスコミックス)

人形の国(4) (シリウスコミックス)

 

  

今回はウメ落下後の極寒の北合成スラブ地方を舞台に物語が展開。

帝国はAMBを持ち姿を消したタイターニアとケーシャ(とエスロー)を探しています。

探索要員としてジェイトとトオスが一緒に行動していますが、この二人はなんか良い感じのペアですね。寡黙なトオスが要所要所でジェイトをうまくカバーしてちゃんと生存しているあたり、ポッと出てエナだけ提供するモブキャラたちとは違った丁寧な扱いです。今後きっと二人にまつわるエピソードがあるんじゃないでしょうか。

 

一方のタイターニアとケーシャは、無残な姿となったエスローを復活させるべく、超構造体製の扉に守られた部屋に身を隠しながら、尿(作中ではっきり言い切っちゃってますw)や、狩ってきた転生者のエナを与えたり頑張っています。
特にケーシャの献身的なこと!この子、こんなにエスロー好きっ子でしたっけ???自分の兄のせいでひどい目に遭ったエスローに対する罪滅ぼしというのもありますし、エスローがいないと戦力的にひとりぼっちというのもありますが、どうにもそれ以上の感情があるようですね!

余談(1)ですが、尿は「シドニアの騎士」で好評(?)だった星白水を意識したものでしょうかw
これもある意味作品を跨いだコラボ(?)ですね!

 

さて、カジワン。こっちは人形病患者を集めた新興宗教を立ち上げ、タイターニア・クローンの持つ特殊な力を利用して、着々と戦力を増強しています。

帝国とエスロー達との間に割り込みAMBを横取りして地底世界へのアクセスを狙っていますが、相変わらずの自己中心まっしぐらキャラ。あれだけみんなに迷惑をかけ、後悔もしたのに、反省の色が見えません。むしろ、加速しています。死をも覚悟するようなどん底を味わった反動で、元より過剰な執念がさらに研ぎ澄まされて、理性を凌駕(本人の中にも、理性を保ちたいという思いはある)している感じ。

誰がやばいって、この人が一番やばい気がする...。

 

そんな中、帝国は新たな奇策を発動。

AMB探索能力を向上させるべく、の巨大なクローンを作り、人工コードで転換を実施するという荒技を実行します。謎の技術満載ですね!

それにしても、それを実行している兵器局のタシツマのマッドサイエンティスト感が半端じゃない!明らかに変態で、良い味出してます。

余談(2)ですが、人工コードから「BLAME!」のネット端末遺伝子を連想するのは僕だけでしょうか?(シボが人工的に合成したネット端末遺伝子を使ってネットスフィアへの接続実験をおこなっていました)
弐瓶さんは、こういったSF的なガジェットを作るのが本当にうまいですよね。命名も絶妙ですし、そこに付加されたルールというか、制約も、ストーリーにきちんと整合性を保った上で緊張感をもたらすように工夫されています。

余談(3)ですが、カジワンの立ち上げた教団のマーク、セーフガードのそれと一致してますね。(これは、カジワンが転換に使ったコードに記されたマークでもあり、鎧化した際の前頭部のマークも同じものです)こういう意味深な暗示があるので、どうしても深読みしたくなってしまいます。

そういえば、ジェイトクローンの転換時に「周囲の物質を素材にしながら身体を形成」する描写が出てきますが、これもセーフガードを連想させます。

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さあ、次回はどうなるでしょうか?

まず、気になるのは、主人公であるエスローがいつ復活するのか。そして、復活したエスローに対してケーシャがどんな反応をするのか。

クローンジェイトの能力は?

カジワンたちはどう絡んでくるのか?

 

個人的にちょっと気になっているのが、以前にケーシャが、使用済みコードについてタイターニアに聞いた際に、「大事に取っておく」ように指示した上で、それ以上のことを語れない、と言っていたこと。

一見ただの抜け殻である使用済みコードに、何か重要な意味があるのでしょう。

で、意味があるとしたら、使用済みの人工コードにも何かあるのかな、という素朴な疑問が生まれたわけです。あれだけ巨大なものですからねぇ...。

 

今後の展開が楽しみですね。