AKIRA - 不朽の名作サイバーパンクがフィギュアに!このタイミングなので、AKIRAを語りたい!
大友克洋氏の名作、「AKIRA」のフィギュアが海洋堂から発売されるのを記念したイベントが開催されるそうです。
海洋堂の代表取締役、宮脇修一さんの著書についても紹介しています。よければこちらもどうぞ!
AKIRAと言えば、映画版が有名かと思いますが、ご紹介するのは原作となった漫画版です。
漫画の連載を休止して、映画の制作に入ったのち、再び連載して完結した、という作品です。
2020年の東京五輪が予知されていたことで、五輪開催決定以降、話題になっていますね。この記事を書いている2019年は、ちょうど「AKIRA」の世界の時間と同じ頃ということになります。
連載開始が1982年で、実は僕と同じ歳です。そう考えると、何か感慨深いものがあります。
僕がこの作品に初めて出会ったのは小学生のころ。友人がハマっていて強くおススメされたのですが、この書籍が普通の単行本ではなく、大型本で少し値段も高くて(1000円前後)、当時の自分にはそう簡単に全6巻を揃えられるものではありませんでした。
その後、中学生になり、おこづかいを貯めてこつこつ買い揃え、最後の6巻まで手に入れたときは非常に感動したのを覚えています。連載モノの漫画に最終巻にありがちな事ですが、他の巻より少し厚いんですよ。それがまた、ちょっと特別感があって。
その後、これでもかというくらい、何度も読んで、周囲の人にもすすめていたわけですが、高校のとき、学校に持っていって教室に置いておいたら、そのまま行方不明になりましてw
なぜか、6巻だけは手元に残ったのですが...。いやー、あれはショックでしたね。
まあ、そんなわけで、僕にとって色んな思い出がある作品ですが、特に僕が好きなポイントを紹介させてください。
(以下の文章には、あらすじ的なものはほぼ出て来ません。ネタバレ的な要素もなるべく排除しています。が、本編を知らずに読んでも、あまり響くものもないかと思いますのであしからず)
存在感溢れるキャラクターたち
金田や鉄男の存在感は、もはや語るまでもないと思うので、ここではあえて除外して、他のキャラクターにスポットを当ててみます。
AKIRAの存在感
アキラは、自ら前面に出て来るようなキャラではありません。言うならば、象徴です。刺激を与えるとヤバイことはみんな承知していますが、かといって、何かを主張したり、行動したりということはないので、見方によっては地味な存在です。
しかし、地味だからこそ放つ存在感があると思います。彼がカジュアルに喋ったり自己主張をしたら、それこそ象徴としての存在が崩壊してしまう。
作品全編を通して、自我が崩壊した姿であることが、「力」の危うさを裏付ける説得力に繋がりますし、何よりラストへと向かう大事な伏線なのではないでしょうか。
かっこいい中年たち
大佐とおばさん。この二人が大好きですね。自分がおっさんになったから余計にバイアスがかかっているのかもしれませんが...。
フィジカルの強さはさることながら、メンタルの強靭さに感嘆します。 少年たちは若さと勢いがありますが、中年勢はどっしりとした重さがあり、地に足の着いた感じがあります。彼らがいることによって、健康優良不良少年たちが引き立つわけですね。窮地に立たされた時の判断力、物事を完遂することへの責任感、信念を貫き通すことへの執念。
だからこそ、最後、金田に誘われた大佐がやんわりと断るシーンは、為すべきことをやり遂げた=解放された男の姿を感じ、心に響くのです(僕だけでしょうか?)
また、おばさんのケイを見守る優しさにも心打たれます。そこには女性特有の母性があり、それは男の友情とはまた違った人と人のつながりを演出しています。
ミヤコの存在感
かっこ良すぎます。個人的に一番の鳥肌シーンはミヤコがSOLを操作するケイに「ここに落とせ」と指示する場面ですね。これは、実際に読んで感じていただきたい!
ミヤコのような、お師匠様的立ち位置のキャラが、実際に前線に出てくる系の展開って、熱くないですか?それだけ状況が切羽詰まっているというか、物語のハイライトに差しかかっているという感覚になります。ダイの大冒険で例えるなら、アバンやマトリフが戦うようなものです(例えが古いw
それにしても、ミヤコの映画版での扱いは... (略
ケイは人と人の架け橋
ケイの存在価値はなんでしょうか?
作品全体を通してみた時に、僕が思うケイの役割というのは、人と人の架け橋、接着剤のようなものではないかと。
彼女の存在を取り除いた場合、何が起こるかというと、人と人が繋がらないんじゃないかという気がします。
序盤で、金田たちとゲリラとを繋いだのも彼女の存在だと思いますし、終盤のミヤコをはじめとするナンバーズたちが鉄男と対峙するのも彼女を介しています。ヤサくれたリュウを気にかけたのもケイですし、ラストで金田を救い出したのもケイです。
彼女の役割は非常に重要で、金田が自由に動き回るキャラとして成立するためにはその他の様々な(物語の進行上の)雑務をこなしてくれるケイのような存在が欠かせないのです。魅力的な金田像は、ケイによって支えられていたのです!まさに、良きパートナーですね。
活き活きとしたモブ
見落されがちかもしれませんが、モブもしっかりと丁寧に描かれているのが、メインキャラクターたちを引き立てるのに一役買っています。縁の下の力持ちですね。
シーン内に必要最低限なものだけが描かれていると、画としてクリーン過ぎるのです。良い感じに汚れがあってはじめてリアルな空気感が生まれる。モブはそんな、ノイジーな歪み系と世界に広がりを持たせる空間系のエフェクトを担っている気がします。
モブも、ただ並べればいいというものではなく、きちんと個性を持って、生きた存在として切り取らないと、ただの集合写真になってしまう。彼らの一挙手一投足から、物語の世界観、政治的、文化的な背景などが見えてくるのです。
魅力溢れるガジェット
衝撃の衛星兵器
SOLですね。初めて見た時には度肝を抜かれました。空からレーザーが一直線に地面に突き刺さるあのシーンです。宇宙の「高さ」を感じられる素晴らしい構図!
あのシーンに限らずですが、緻密な背景の描写があるからこそ、空想の兵器であるSOLやフロイトにリアリティが生まれると思います。
フロイトは完全に噛ませ犬でしたね...。
レーザー砲+金田
この組み合わせのカッコよさは異常です。(映画版でも、漫画版とはだいぶ状況が違いますが有名なシーンですね)
「力」で戦う鉄男とケイの間に、生身の金田が割り込んでいくわけですよ。無鉄砲にもほどがありますが、それをやってのける金田に痺れる憧れるわけですよ。
この「生身」のリアリティが良くて、バトル漫画にありがちな人間離れした能力でなんとかなってしまう感じとは違う、一発食らったら死んじゃう、という緊張感が続くわけです。
レーザー砲という秘密兵器が、どれくらいのアドバンテージになるのか?これで勝てるのか?そもそも、まともに戦えるのか?
読者はそんな期待と不安の入り混じった感情を金田に寄せる。超能力とSF兵器の異種格闘技戦です。ボクシングとプロレスで、試合になるの?っていう、あの感覚です(例えが分かりにくかったらすいません...)
このシーンは、なりふり構わぬ金田の魅力が全開で、しまいには、レーザー砲で殴るわけですよ。最先端の兵器を使っての物理攻撃です。こういった勢いのあるアクションシーンは、高い画力が要求されますが、そこはさすがの大友さんですよ。しっかりと体重の乗った一撃がクリーンヒットする描写は完璧です。
冷凍カプセル&エレベーター
パイプ好きにはたまらないです。緻密な背景の描き込みが魅力の一つである本作ですが、冷凍カプセルとその周辺施設の描写は特に好きです。
終盤の、暴走した鉄男がカプセルと共に地上に現れるシーンは圧巻です。そしてもちろん、地下のエレベーターも。あの、重量感溢れる動作が良いですね。あれに乗っている時は少しだけ時間がゆっくり流れている気がします。独特のタメを生み出す良いアクセントなのではないでしょうか。
序盤にこの施設を舞台にしたシーンがあった上で、終盤にもう一度同じ場所を舞台として物語が進行するのは、色々と感慨深いものがあります。この作品は、序盤の頃からすでに物語の最終盤で回収されることを想定した伏線が張ってあったりするのですが、この施設の再利用も初めから想定されていたのかもしれませんね。
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以上、僕の趣味で好き放題書かせていただきました!
とにかく、サイバーでパンクで、ワクワクするようなSF的要素、魅力的なキャラクター、高い技術で描き出された背景と人物、きっちりと伏線も回収して綺麗に完結しているストーリーと、あらゆる面で完成度の高い作品ですので、未読の方はぜひ読んでみていただきたいです。